2018年画廊企画PART7
小林和史展
― 漂泊 ―
「漂泊003」600X600x100mm
Floating 和紙、墨、胡粉、金箔、金粉、銀箔、銀粉、銅粉、顔料、漆、樹脂、ステンレス針、木、他 2018
2018年10月13日[土] ― 21日[日]
AM10:30-PM7:00(火曜休廊・最終日pm5:00)
4年ぶり5 回目の小林和史による個展を開催します。
一枚の紙を巧みにはさみ一本で切り出し、造形的に本物と見まがうほどリアルに立体化する昆虫造形・・・ そう思われがちだが、実は作家は“元々 昆虫づくりというよりは、普遍的な人間の有様を表現して来たつもり”だと言う。
そして今回の個展では、人間の立ち位置から考えたいと思っていると・・・。
今回のテーマは『漂泊』。 彼にとって漂泊は漂白でもあり、社会がフラット化すると共に、私たち人間は色を失っていく。 あの松尾芭蕉の奥の細道「漂泊の思ひ」を想起するほどに、昔から人間は幾多の場面でさまよいながらも、しかし常に変わることなく、ある意味“昆虫”の如く普遍的であり、これもまた人間の性なのかもしれない。
全体同一性に観る、実は固有の微妙な差異を見出すことの重要性が、彼の作品から静かなメッセージとして発信されているような気がするのです。
画廊主・梅津宏規
「標 本」というスタイルを作品にとりいれたのは、今回 初めての試みでした。
永年にわたり 昆虫をモチーフに作品を創り続けてまいりましたが、昆虫のカタチやその質感そして有様は、 イコール 人間の 嘘のない本質的な姿 として表現 してきたつもりです。改めて標本というカタチにしてみますと人間の普遍的な群像劇が観えて来ます。
例えば「三十三間堂」のおびただしい千手観音立像を前にした時の衝撃は 今も鮮明に思い起こされます。人間の本質は姿カタチや観点を変えるコトによって 鮮やかに炙り出されてくると思うのです。
僕の父親は、僕が産まれる前から その人生を昆虫採取に投じました。僕の創作の始まりもその影響です。
父親亡き後、当然のごとく僕がその膨大な標本箱を受け継ぎました。艶やかな蝶類から目には見えないような微細な甲虫類までピンでとめられ保存されています。採取した年、月日、場所が小さなラベルに記載され、その全ての個体に付けられています。これを見れば、父親がいつ何処で何をしていたか?…が 虫 というカタチを通して判ります。言い換えれば標本は集めた人間の日記であり、感度や想いの記録とも云えるのです。
例えば僕が産まれる以前、若き日の父親がこの蝶を追い求めて、僕の知り得ない在りし日の野山を駆け巡る姿が、まるで映画を観るように蘇ってくるのです。標本たちは半世紀以上の時間を経て限りなくゆっくりと色褪せ、モノクロームに近づいて行きます。それゆえに、より本質性を増している気がするのです。
僕にとって、父の遺した標本箱はタイムカプセルであり、タイムマシンのようでもあります。
小林和史
「漂泊001」 600X600X100mm 和紙、墨、胡粉、金箔、 2018 |
「漂泊002」 600X1200X100mm 和紙、墨、胡粉、金箔、 2018 |
「漂泊004」 200X400X100mm 和紙、墨、胡粉、金箔、金粉、 2018 |
「漂泊019」 200X200X100mm 和紙、墨、胡粉、金箔、金粉、 2018 |
2018年画廊企画PART7小林和史展― 漂泊 ―